『一度行ってみるといいよ』と言われて、目黒にある気功の先生を訪ねたのは、私がまだ23歳の頃でした。社会人になったばかりで、仕事を効率よくこなすことができず、毎日が失敗の連続。心身ともに疲れ果てて、『学生の頃に戻りたいな』とさえ思っていました。そんな時、友人が勧めてくれたのが、東洋医学の『気功』を利用した施術だったのです。

施術は、体のコリを丁寧にほぐしながら、気の流れを整えていくというものでした。痛いような、でもどこか気持ちの良い、不思議な感覚でした。施術が終わった瞬間、体が内側からポカポカと温まり、終わって外に出る頃には、心まで軽やかになっていることに気づきました。そして、先生の温かい人柄にもとても安心し、施術を通して、体だけでなく、心の疲れまで優しくケアしてもらえたような、そんな温かい気持ちでいっぱいになったのを覚えています。

それからというもの、仕事は相変わらず失敗の連続ではあったのですが、2週間に一度、目黒に通って気功の施術を受けることが、私にとって大切な時間になりました。

そして、私が30歳の頃、突発性難聴になり、仕事を退職せざるを得なくなった時、『施術の道を歩んでみようか』と思えたのです。東洋医学とは何なのか、自然治癒力はどのようにしたら活かせるのか、引き出せるのか。あの目黒での経験は、今の私の とても大事な原点となっています。

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